Education and Proffesional Development

義肢装具士育成制度


全体像



我々の義肢装具士育成制度はイギリスの卒後教育とキャリアパスを参考に日本の義肢装具の実情に合わせて変化を加えたものです。具体的には、Mr.Andrew Nicol氏が提唱した3つのガイド(キャリアフレーム、教育フレーム、プリセプターシップ)を取り入れています。


キャリアフレームは人材を育成・成長・評価するため、義肢装具士の能力尺度として利用できるよう定義された枠組みです。教育フレームは卒後教育に関する枠組みです。プリセプターシップは卒後すぐの義肢装具士の教育です。具体的には、指導者としての導き方やサポートの仕方、新人がどのように行動すべきか、お互いに学び合う協力関係も含めて、学生から一人で義肢装具士として役割を果たせるようになるまでの教育です。10年のパスウェイ、CPD制度、プリセプター制度はこのガイドを参考に生まれたものです。


我々はISO9001の認証を受けています。ISOの品質管理システムの中で働くことでPDCAサイクルを身に着けます。臨床での患者評価・設計・適合確認・結果評価・考察の流れのなかで自らの仕事の自己評価をクリティカルに行い次に繋げ経験を積みます。これはクリニカルリーズニングにも繋がります。症例報告などの学会発表も仕事の一つとして義務付けています。目的、方法、結果、考察、結語の発表の流れは臨床での義肢装具士が行うべき思考プロセスそのものです。時間をとってきちんと顧みることで論理的な思考プロセスを身に着けます。


グループのリーダーとしての振る舞いを通じてOODAを身に着けてもらいます。OODAは正しい状況判断を元に何をすべきか判断し実行することです。そのためには10年間の正しい経験の蓄積がとても大切です。入社してから10年後に臨機応変に義肢装具士として、ときには管理職として正しい判断と行動ができるように学んでもらいます。入社から患者様と係わる最後の日まで必要とされるプロフェッショナルとして学び続ける育成制度を目指しています。


PC(プリセプター)制度



PC制度は10年のパスウェイの入り口になります。まず3週間の他部署を含めた新入社員(NC)全員での研修があります。この研修では洛北義肢で働くために必要な関連法規や社会保障制度、コミュニケーション能力、我々が扱う義肢装具など基礎の基礎を身に着けます。そのあと各配属先でのOJTが始まります。ここからの6ヶ月は、PCと管理職と臨床現場で学びます。この期間はお互いに一緒に過ごしながら共に学び合うことになります。


PC制度はアクティブラーニングの考え方を用いてOJTを行っています。詰め込みで教えるのではなく、いつでもさらなる疑問や課題を与えてNCの探求心を育て主体的に行動してもらうことを大切にしています。そのような日々を続ける中で自ら状況を把握し課題を見つけ調べ学ぶ力を身に着け、患者様のお役に立ち続ける能力を身に着けてもらいます。1週間に1度決められた曜日に新人義肢装具士が集まり臨床現場での学びと課題をお互いに共有します。PCからの意見も取り入れて課題をクリアーするため練習やロールプレイングなどを行います。


PC制度にはもう一つ大切な役割があります。PCが自身の経験も踏まえて寄り添いながら社会人になってすぐのリアリティショックを緩和するお手伝いをします。NCの社会人としての一歩をスムースに歩み始めてもらうためです。PCだけでなく、会社全員がNCに思いやりを持って見守り育てています。


10年のパスウェイには成長が実感できる乗り越えるべき通過点がいくつか設定されています。PC制度はNCにとっての素晴らしい10年を過ごしてもらうための最初の一歩です。


10年のパスウェイ



我々は前述したキャリアフレームガイドを参考にして、社員の継続的な成長のために10年のパスウェイを設定しています。


初めの5年は人から学ぶことを、次に人に教え、教えることで学ぶこと、そしてチャレンジすることを目指しています。PC制度は新入社員だけの制度ではなく、10年のパスウェイでもプリセプターとして人を育てる経験をしてもらう大切な制度です。まずは日頃の業務はもちろんのこと、はじめての学会発表にチャレンジすることやCPD審査を継続してパスすることなど、プリセプターに選ばれるように自分が成長することです。選ばれたら自らの強みと弱みに向き合いながら人を教えるのに必要な勉強量をこなして、NCと共に学びながらプリセプターとしても社会人としても成長する大切な経験です。洛北義肢の「人を育てられて一人前」という文化を初めて感じる時だと思います。この5年間は学び教えながら全般の広い基礎と知識を身に着ける大切な時期です。


次の5年は専門性を持つこととグループのリーダーとしての振る舞いを学んでもらうよう通過点を設定しています。5年目ぐらいになると専門性の高い病院やクリニックに参院することが多くなり、必然的に自らの専門性を高める必要があります。CPDを用いて専門書を購入して学んだり、専門性の高い学会に参加したり、入会したりして専門性を高める時期です。このころになると会社から国内外のセミナーや学会にも派遣されることも増えてきます。2年に1回は学会発表や論文の投稿をすることを推奨しています。取り組みが評価されると義肢装具士の養成校や大学だけにとどまらずリハビリ関連職の大学での講義や、セミナーや学会での講演などの声がかかるようになります。



初めの5年間の通過点を無事にクリアーするとグループのリーダーとしての教育が始まります。まずは主任候補としてサポートを受けながら主任の業務に携わります。主任の業務が滞りなく運営できるようになれば、主任に昇格となります。昇格後はPC制度の枠組みの中で管理職としてPCとNCと一緒にスーパーバイザーとして関わることになります。そのような経験を経て係長に昇進していくことになります。10年のパスウェイを修了したときに、管理職としても仕事を続ける社員もいれば、管理職にはならず義肢装具士に専念して働くことを選ぶ社員もいます。そのような個人の意思を尊重したダイバーシティも受け入れています。そのように専念する社員にも秀逸な業績とともに20年勤続した社員にはエクスパートとして係長と同水準の待遇を受けるエクスパート認定制度を用意しています。


義肢装具士のなかには製作に関わらず臨床でのサービスに専念することを希望する同僚もいますが、中には臨床と製作に携わることを希望する社員もいます。義肢あるいは装具製作士2級以上の取得、学会発表、PCを経験したことの条件を満たせば臨床と製作を行うリハビリテーション課に異動することは可能です。現在、義肢装具士5名がそのような業務形態で働いています。


CPD(継続的プロフェッショナル育成)制度



CPD制度は社員ひとりひとりのプロフェッショナルとしての能力の育成と開発、更なる成長を支援する制度です。海外ではさまざまな業種に導入されています。イギリスでは義肢装具士にも導入されており免許の更新に必要とされています。その理由は国民の医療や健康を守るために義肢装具士は最新の知見や技術を身に付けたプロフェッショナルであるべきとの考えがあるからです。


我々もその優れた志に感銘を受けそのようなプロフェッショナルであるために卒後教育の仕組みに取り入れています。イギリスでは雇用者側に社員がCPDを行えるよう最善の努力義務が課せられています。我々の場合はCPD手当受領条件を満たし1年毎の書類審査を通過した全員に年間一人につき12万円を支給しています。また業務中にも時間があればCPDに費やすことを推奨しています。3年間連続で審査を無事通過した場合は審査期間が1年から2年に延長になります。


CPD制度を用いて自分の興味分野や仕事で必要な知識を得るために書籍やジャーナルを購入する者、専門的な学会やハンズオンセミナーに参加したり、義肢装具製作士やフットケア指導士などの資格にチャレンジし合格する者もいます。日本小児整形外科学会や日本リハビリテーション医学会など自分の興味のある学会に入会する者もいます。CPD制度はイギリスの制度と同じくとても高い自由度を維持している制度です。そのとき自分がプロフェッショナルとしての役割を果たすために一番必要としていることを自分で決めて学ぶことができます。


海外研修



現在コロナ禍により中断していますが、10年のパスウェイを順調に進めていて学会発表を行った義肢装具士には海外での学会や研修に参加できる海外研修制度があります。感受性の高い時期に別の文化を早く感じ自らの常識の範囲を拡げ自分の可能性も拡げて欲しいという創業者からの想いを引き継いでいるものです。中には海外ではなく義肢装具のハンズオン製作セミナーなど国内の研修に参加する場合もあります。下記のテーブルは今までの海外研修の履歴です。

期間 件名 開催地
2018/11/7~9 ISPO Asia Prosthetic and Orthotic Scientific Meeting 2018 タイ バンコク
2018/10/9~15 Techs to CA(BREG社主催セミナー) アメリカ カリフォルニア州
2017/5/8~11 ISPO 16th World Congress 南アフリカ ケープタウン
2016/9/13~19 Techs to CA(BREG社主催セミナー) アメリカ カリフォルニア州
2016/11/3~6 Asia Prosthetic and Orthotic Scientific Meeting 2016 韓国 ソウル カンナム区
2015/6/22~24 ISPO 15th World Congress フランス リオン
2013/2/4~7 ISPO 14th World Congress インド ハイデラバード
2010/5/9~16 ISPO 13th World Congress ドイツ ライプチヒ
2007/7/29~8/3 ISPO 12th World Congress カナダ バンクーバー
2006/11/17~19 ISPO Asian Prosthetics and Orthotics Workshop in Korea 2006 韓国 ソウル
2004/8/1~4 ISPO 11th World Congress 香港
2001/6/30~7/9 ISPO 10th World Congress イギリス グラスゴー
1998/6/28~7/3 ISPO 9th World Congress オランダ アムステルダム
1997/5/7~5/17 国際整形外科リハビリテーション技術見本市と学会
オットーボック社セミナー
ドイツ ニュールンベルグ
ドゥーダーシュルタット
1995/4/2~4/7 ISPO 8th World Congress メルボルン オーストラリア
1992 ISPO 7th World Congress シカゴ アメリカ